SUBシステム:尿管結石の治療

尿管結石による猫の尿管閉塞が近年多く見られます。
特にシュウ酸カルシウム結石が原因となることが多く、キャットフードが一つの要因ともいわれています。
尿管が詰まってしまう(閉塞する)と、詰まったほうの腎臓には排泄できない尿が過剰に溜まってしまったり、大きなダメージを受けてしまい、詰まり(閉塞)が解除されないまま長時間が経過するとそちら側の腎臓の働きは戻らなくなってしまいます。
治療には内科的治療と外科的治療があります。

内科的治療 … 点滴や利尿剤、尿管を広げる薬などを使って、自然に尿管の結石が膀胱へ移動し尿管閉塞が解除されることを期待します。しかし、内科的治療で閉塞が解除されることはあまりなく、ほとんどの場合外科的治療が必要となります。

外科的治療 … 手術で腎臓から膀胱へのルート(尿路)を確保することが目的です。尿管切開・結石摘出、尿管ステント、尿管膀胱吻合など従来の手術方法はいくつかありますが、麻酔・手術時間も長く、再閉塞の問題などもあるため、当院では『SUBシステム』という腎臓から膀胱へのバイパスを設置する方法を第一選択としております。

【SUBシステムについて】
SUBシステムは腎臓と膀胱それぞれにシリコンカテーテルを設置し、カテーテルとカテーテルの間にポートと呼ばれる金属性の器具を設置、皮下に固定します。皮下のポートを介してカテーテルの洗浄を行うことができます。

【 SUBシステムのメリット 】

  • 従来の方法と比べて麻酔・手術時間も比較的短いため、身体への負担が軽減できます。
  • 再閉塞のリスクが少なく、もしカテーテルが詰まってしまってもカテーテルの洗浄や交換だけで済む場合もあります。
  • 尿管切開などの手術法の合併症である尿管断裂や術部からの尿の漏れのリスクを回避できます。
  • ポートから洗浄を行うことができます。

【 SUBシステムのデメリットや合併症などについて 】

  • 材料費が高価なため、一般的な手術と比べ高額な治療費となります。
  • 手術を行っても術後の腎機能の改善が乏しい場合、残念ながら救命できない可能性もあります。(これはSUBシステムに限らず、他の手術法でも同様です)
  • 血餅による閉塞、デバイスからのリーク(漏れ)、チューブのよじれや折れ曲がりなどの術後合併症が起きた場合、再度手術が必要となる場合があります。
  • 腎臓や膀胱からの出血による貧血、腎機能低下による腎性貧血などが起こる可能性があります。
  • 術後、血尿や頻尿、排尿時の痛みなどの症状が続く場合があります。
  • カテーテルが劣化したり結石などで詰まったりした場合に、数年後にカテーテルの交換が必要な場合があります。
  • 術後は定期的(3ヵ月に1回程度)にカテーテルの洗浄が必要となります。これはカテーテルの詰まりを予防するためです。

術後は通常1週間~10日ほどの入院が必要となります。点滴をしながら術後の尿の状態を日々確認したり、血液検査によって腎臓の数値をチェックしたりします。